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[個人ネタ]森の中の匂い

小旅行から帰ってきて、まだぼーっとしている。食べ過ぎのせいじゃなくて(笑)、きっと記憶の中に染み込んだ匂いのせい。「な」さんや「生方」さんがコメントに書き込んでくれて推察されていたとおり、私の行き先は北海道。南端の函館と大沼だけしか行かなかったが、母の故郷でもあり、私もかつては夏休み丸まる「島流し」にあって、祖父母と共に過ごした街なので、とても懐かしい場所。「いかそうめん」も久々に食べたし、バスク料理にも舌鼓をうったし(自家製生ハム旨い!)、温泉にも浸かりきったし、本望(或いは欲望)を全部果たしてきた。そして、初めて遭遇したこともあった。

初夏の函館に行ったことがなかったせいか、あまりにも数多くの花が咲いているのに目を見開いた。終わりかけの八重桜、マーガレット、ひなげし、マルメロ、ルピナス、はまなす、咲き始めのバラと紫陽花。スズランが終わっていたのはかなり残念だった。もっとも印象が深かったのは、ニセアカシアの花の香り。ふつう、「アカシア」と言われているけれど、本当は「ニセアカシア」なのだという話は『アカシアの大連』という小説で読んだことがあった。でも、ちゃんと見たのは初めて。空からふわっと甘い香りが降ってくるのに、街の中でも何度も出会い、そのたびにうっとりとなった。

人が多いところに行きたくない私が歩いていたのは、人気が本当にないところばかり。たまに観光バスがてんこ盛りの場所に遭遇するのだけれど、そこから出てきた人々はあっというまにどこかへ消えてしまう。函館の郊外のとっておきの場所──映画の『灰とダイヤモンド』の冒頭に出てくる道にそっくりと私は昔から思っている──を歩いていたときは、本当に他に誰もいなかった。ポプラ並木の急な坂道の両側に牧草地が広がる場所。さらに行くと牧草地と森が交互に現れる山道で、上のほうでは海も遠くに見える。そこでは森に入った途端に「ひどく濃厚な柏餅の匂い」にびっくりした。

あれは柏の匂い?でも、柏の木が見あたらないのがミステリーだった。熊笹があんなふうに薫るのかしら?

大沼の湖畔の林のなかでは、また別な甘い匂いが薫っていた。どこにも花が見あたらない。何の香りなのだろう?と、香りが強くなる場所をよくよく見てみると、必ずミズナラの木があることに気づいた。コナラはそんなに薫っていない。ふんわりと甘くて、気持ちがほっとするような香り。初めてこんな木の匂いがあることを知った。(帰ってきて調べてみると、ミズナラは虫に食われると特有のアルコール系物質を放出することがわかった。また、ミズナラの木の樽で作るウィスキーというのもある。独特な香りが生まれるらしい)

泊まっていたのも森の中にあるコテージで、自分たち以外に人に遭わず、虫と鳥の声、ときおり降りてくる霧に森の匂いが閉じこめられている中に浸りこんだ。深呼吸を何度しただろうか。空気がこんなにおいしいなんて(台風で飛行機が飛ばなくなってほしいと願ったくらいだ)。帰ってきても、まだ、匂いは記憶にしっかり生きている。

**
身勝手ながら、こんなことで人はけっこう元気になれるもんです。あの空気を忘れないでいたいなぁ。

(ハラスメント、ごめん→留守を預かってくれた3人さま。ここのブログを読んで、舌なめずりしたみなさま。それにしても、帰宅後の蒸し暑いこと。このギャップはつらい)*さらに「ハラスメント」になるかもしれないネタ。函館の友人が買っておいてくれたルバーブのジャムは激旨。バスクの店でもデザートにルバーブ・シャーベットがでて、心底感動したけれど、酸味がたまらない。他には自分で買い求めてきた鮭。この時期にしかでない「時知らず」というお馬鹿な鮭はとろける旨さなのだ。今日はカマを塩焼きにするつもり。半身を買ってきたので、うちは当分「サケ祭り」が続く)
|| コメント(1)| Track back(0) | 2004-06-24


■ 五感の記憶
スシハラに誘発されて、先日来、私の頭の中にも、過去に北海道で食べたもろもろの記憶があふれかえっています。ああ、青函連絡船(懐かしい!)がついた夜明け前の函館朝市で食べた茹でたての毛ガニのおいしかったこと……。
「記憶」に驚かされるのは、毛ガニの味や触感だけでなく、だんだん青くなっていく空、「もう1匹、オマケ!」と言うオバサンの声、キリッとした空気の感触や立ちのぼる湯気の温かさ−−そういったものまでもが一挙によみがえってくること。人の名前を筆頭に、「学習した知識」はどんどん消えていくのに、こういう身体記憶はホリスティックに保持されています。
(以下はコジツケではありません)パレスチナの人たちも、家や持ち物、土地、風景、多くの「もの」を破壊され失っても(あるいは、失ったからこそ)、きっと、私たちなどよりずっと強く、それぞれのホリスティックな記憶を−−もちろん、つらく悲しい記憶もあるにしても、それを上回る美しく楽しい記憶も画然と−−保ちつづけているにちがいない。折りに触れて、そんなふうに思っています。
chimaki (2004-06-25 11:22:08)


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